高齢者の賃金を設計するにあたり「60歳以降の給与」「老齢厚生年金の在職老齢年金」「雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金」の関係を理解し、国の公的給付金制度を上手にご活用ください。
平成18年の高年齢者雇用安定法の改正において、65歳までの雇用延長が段階的に義務付けられています。各企業では、定年延長、継続雇用制度の導入、定年の廃止などの高年齢者の雇用確保措置の対応が行われておりますが、高齢者を雇用に際して、賃金設計の問題は避けて通れません。「会社の経費負担の軽減」と「高齢者の手取り賃金の配慮」するためにも公的給付金制度のシミュレーションを行い、高齢者雇用における賃金設計の一つの施策としてご活用ください。
60歳以降、社会保険に加入し勤務を続ける場合には、賃金(給与と賞与の総額)に応じて年金額が減額調整される仕組みです。
<在職老齢年金のイメージ>
※賃金とは、標準報酬月額とその月以前1年間の賞与を12で割ったものを合計した金額となります。
雇用保険に加入している方が60歳になると、雇用保険から高年齢雇用継続給付が支給されます。
など一定の要件がございます。
<高年齢雇用継続給付の支給金額>
※60歳時の賃金月額は上限額があり、毎年改定されます。
※高年齢雇用継続給付は支給限度額があり、給与との合計により調整されます。
<高年齢雇用継続基本給付金イメージ>
在職老齢年金により年金額の調整を受けている方が、雇用保険制度から高年齢雇用継続給付を受給する場合は、その支給率に応じて年金の標準報酬月額の6%~0.1%相当額の在職老齢年金が減額されます。
<在職老齢年金と高年齢雇用継続基本給付金の調整によるイメージ>
高年齢者のシミュレーションは、60歳以降に賃金を減少させても、国の公的給付金制度を活用して本人の手取り額をなるべく下げないで済む為の施策といえます。設定する給与額によっては、給与を増やすことによって、手取り額が少なくなってしまう「逆転現象」が起こることもあり、60歳以降の賃金、高年齢雇用継続給付、在職老齢年金の3つを組み合わせた制度は、非常に複雑で、従業員への説明、手続実務など注意しなければなりません。
高齢者の賃金設計を行う際には、高齢者の戦力化を考慮のうえ、職務内容やモチベーションの維持など総合的に勘案のうえ検討する必要がございます。